冷えた夏みかん

日々妄想、問答。

例えばわたしが灰になっても

例えばわたしがいなくなっても、どうか泣かないでほしい。

 

あいつは星になったんだと、どうか皆で笑ってほしい。

 

例えば庭に花が咲くために、畑に巻いてくれてもいいや。

 

私は養分になりましょう。

 

例えばわたしが消えたとしても

あなたはわたしを風景の中に探し続けるでしょう。

 

そのときにわたしの集めた本を、読んだりあげたりして、味わい尽くして忘れてほしい。

 

例えばわたしが灰になっても、新しく花が咲くのでしょう。

 

そしたらそんなに嬉しいことはないから。

 

だからわたしが消えたとしても、世界に私は残るでしょう?

 

ほら、寂しくないよ。

わたしはそう言って泣いている女の人の頭を撫でました。

 

朝が来る。今日が始まる。

わたし達にはまるで関係ないように思えました。

 

切り取られた部屋、切り取り線はまだ世界と繋がっている。

さあ、戻ろう。

 

わたし達はそう言って、今日をまた始めるのです。

終わりなき人生、永遠に生きることは可能か。

 

そんなことを悩んでいるあなたに答えをあげて、わたしはやれやれと肩を回しました。

あなたもわたしもお互いが大切で、過ぎてしまって立往生。

 

そこに希望があるなら、パズルはするりと解けて。

 

生きていけるよ、大丈夫。

 

私は彼女にokサインを出しました。

 

今日はマクドナルドを食べよう。

ジャンクフードがこの空気を救ってくれるはず。

 

わたし達はマンションを出て、商店街を目指しました。

 

あ、猫。

 

彼女が指差しました。

 

わたしがいなくなっても、世界から猫は消えない。

そう言うと彼女がようやく笑いました。