冷えた夏みかん

日々妄想、問答。

海を目指し、歩き出した

この道をまっすぐ行くと、次第に海が見えると爺様が言い、そこで私を待つという。

 

私は不思議に思いながらも爺様を家に残し、籐椅子で爺様の歌う演歌を聞きながら道を歩き出した。

 

笹藪を抜け、少し行くと小川がある。

そこで教師に出会った。

教師は「何事も、まずは学ぶことから人間は始まる」と言いながら、並んで歩き、しばらくすると道を曲がって逸れて行った。

 

しばらく歩くと小船があった。

「金を出しな」と言われたので、持ち合わせが無いと言うと、「なら商いをしな」と商人のところへ連れていかれ、そこで10年働いた。

貯まったかと思えば使ってしまい、どうにも私利私欲が強くていけない。

そうこうしている内に年を取り、病気をして命のありがたみと金の虚しさを知り、また海を目指して歩き始めた。

 

今度は船に乗れた。

「まだまだ、続くぜ」

船乗りは言った。

それから大波だったり、小波だったり、干ばつだったり大しけだったりして、船はなかなか進まない。

次第に混んできた。

度の船も一つの門をくぐろうと、皆が集まっているのだ。

「まあ気長に待つことだ」と船乗りが言ったので、眠りにつくことにした。

眠っている間に、体から浮遊し、気が付くと皆が皆体を離れ、金を払って門をくぐった者はまた海を目指して長い道のりを行くのだと知った。

しばらく飛んでいると、海に出た。

砂浜に降り立つと、籐椅子に座った爺様がアロハシャツを着て、「やあ」とサングラスを片手にジュースを飲みながらラジオを聞いていた。

 

なんだこちらの方が若いな、そう思いながら「久しぶり」と笑いかけた。