冷えた夏みかん

日々妄想、問答。

うん、絶望から、離れてみようか

来る新しい世の中に向かっていくところで、私は後ろを振り向いてはいけない、と前を行く人に手を引かれた。

 

後ろがつかえてしまうぞ、と後ろから家族が背中を押した。

 

私はランプの火を守りながら、何もかも後ろに流れていく吹雪を見た。

 

天高いところから、黒くも白くもある人が、「君を観ているぞ」と私を励ました。

 

私はおーい、寒くないかい、と手を振って呼んだが、その人は茨の道を、裸足で歩いているのだ。

鉄の靴も履かずに。

 

私はその人の仕事を知らない。ただ、黒くもあり白くもある、ということだけ知っている。

同時に私達の行いに、慰めたり慰められたりしていることも。

 

やあ、光だ、ありがたい!

 

私は道が途切れ、海が広がるその上に、天から降り注ぐ光を見た。

もうランプはいらないね、とフッと蓋を開けて火を消した。