冷えた夏みかん

日々妄想、問答。

のんびり、ぺっそり

いつもペットの犬と一緒にカーテンの揺れる所に寝ころんで、のんびりまったり過ごしていた彼女は、ふいに投げかけられた母からの言葉に、ふと言い返し、それでいつものごとく喧嘩が始まった。

 

どちらも降りることを知らない猫の喧嘩。フーッと威嚇しあい、最後にはどちらかが離れる。

 

彼女は経営難な家のことを考え、母の機嫌を取るべく銀行から今月渡した4万に加え、もう5万引っ張って来て、帰って来てから母にはいと渡した。

けろりと機嫌を直した母を見て、「ま、親孝行も今だけだし」と犬のように忠義者な彼女は考え、ぺろりと舌を出した。

 

そうそう、今の内だよ、親孝行は。私はそう腕組みして雲の上から彼女を見下ろした。

 

ある日、父親が自慢の娘だと彼女を職場の仲間に紹介していた。

彼女は始終むっつりとして、「男は嫌いだ」と言い放ち、父親の好意を無下にした。

その後で「私は男に頼らず生きていくから」と父親に決然と言い放ち、厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだと自ら身を引いた。

 

ここにあなたが好きだった人がいるんだけどなあ、と私は目の前の彼を見下ろしながら、男女の仲なんて、徒然なのに、と惜しいことしたなあ、と彼女に舌打ちした。

彼女はへいこら屁の河童、終生本読んで過ごす所存。

平凡な幸せは私には似合わない。そう思い込んでいるから厄介。彼女は不幸癖が付いている。

男の人が運んできてくれる幸せもあるもんだよー?と私は彼女に呟いてみた。彼女はふんとその呟きを跳ねのけた。

 

さて、のんびりまったりと過ごしていた彼女の元にも、災難はやってくるわけで。

 

ある日産気づいた犬が、彼女の車で苦しみだした。

ここは山間。ちょっと待って、ちょっと待って!と彼女は大慌て。

 

とりあえず車を停めて、いっちょやったらあと腕まくりして、そうして赤犬を取り上げた。

 

あーれーと吸い込まれて地上に降り立った私は、彼女の腕の仲、キュンキュン鳴いて生まれた訳で。

 

そうしてこうしているわけです。

 

今日も彼女と、のんびりぺっそり、寝転んで夢を見る。

 

皆でいれたら楽しいよね、と彼女と鼻をくっつけた。

私は彼女が、大好きだ。

 

いつもおっとりマイペース、焦らせないし焦らない。厄介ごとには近づかない。

頭のいい彼女が、誰よりも大好きだ。

 

そんな私たちのシェスタタイムは、雲が流れる中、穏やかに過ぎていく。

今日も誰かが見下ろしている、そんな私たちの時間。